フランス人は10着しか服を持たない…は☓!日本人は木を見て森を見ず!断捨離のモノの行方は?
「フランス人は10着しか服を持たない」の解釈を間違えている日本
「フランス人は10着しか服を持たない」著者ジェニファー・L・スコット(アメリカ・カリフォルニア)さんは、学生時代にパリへホームステイをして書籍にまとめたものです。
実際のタイトルは「Lessons from Madam Chick-マダム・チックの教訓」と言う。
「フランス人は10着しか持たない」というのは邦題で、全く意味合いが違います。
本を売るためなら、何でもアリなんです。
私はデザインの展示会などで、フランス・イタリアにて「洋服」に携わってきたので、ちょっと違う意見を。
書籍がヒットしてから大手のまとめサイトなどで、「フランス人は10着しか服を持たない」を基本として、様々な記事がありますが、フランスでの生活をしたことがあるのか?…その目で事実を見てきたのか?と反論する気持ちになるほど、現実はちょっと違います。
モノを大切にするフランス人ですが、基本的に日本人のようにモノを捨てません。
フランスの友達は部屋にゴミ箱がないと言っているほど、フランス人は捨てるのを嫌います。
「何かの役に立つかもしれないから」と、後生大事に取っておくパターンが圧倒多数です。
フランス人には捨てるという概念がないので、ゴミ箱がありません。
「しっかり吟味して必要なものしか買わない」=「捨てるものはない」=「ゴミが出ない」=「ゴミ箱はいらない」と、フランスでは伝統的に“ゴミを出さない生活”が根づいているのだ。
<出典:書籍『フランス人の部屋にはゴミ箱がない おしゃれで無駄のない暮らし』>
何かの役に立つように、アレンジしたり、リフォーム、洋服なども最後は雑巾になるのかもしれませんが徹底的に使い切ります。
そして、いただいたものだけど不要なものや、サイズ違いの洋服などは寄付したりします。
「恵まれない人々のために、恵まれない人々とともに」活動する団体の「エマウス(emmaus)」があるように、捨てないことからモノを大切にして心から「丁寧な暮らし」をしているのです。
「フランス人は10着しか服を持たない」の解釈
まず、フランス人は10着…ということはありませんし、パリジェンヌたちは流行の服を着ているわけでもありません。
「フランス人は10着しか服を持たない」著者のホストファミリーは貴族の家庭で、最高級服と本物である宝石やアクセサリーなどの小物でファッションを楽しんでいる上流階級の方の暮らし「貴族」での話しです。
フランス人は10着!と言われている対象は、貴族のドレスのことで、フランスの一般庶民はそんなことはありません。
まず、書籍の文中で「春秋が10着、夏・冬それぞれ10着の他にコート類」となっていますが、無駄な買い物をしなければ、ファッションを楽しめる着数ですし、タイトルと違い、それだけでも30着分です。
10着という表現ですが、1着が1スタイルなので、例にするとインナー・カーディ・パンツを1着にすると、10着分とは相当な枚数になります。
「フランス人は10着しか服を持たない」のタイトルのカラクリに対して、フランスの友達は怒ってました。
春秋が10着・夏が10着・冬が10着・寒いフランスなのでコート類は3着はあるのです。
加えて、夏10着・冬10着…
日本人と大きな違いは、フランス人に「普段着-部屋着」という概念がありません。
いつも「綺麗」にしているのです。…部屋の中でも…です。
家の中でも身なりを整えているので「ブカブカの部屋着」という感覚がありませんし、きちんとした格好をしていることから姿勢が良くスリムな体系の人が多いのです。
普段着をゼロにしたら、かなり着数が減りませんか?
文化が違うのに、本を売るための「フランス人は10着しか服を持たない」というタイトルで勘違いしてしまうことは「木を見て森を見ず」ということです。
実際のフランス人はどのような暮らしをしているのか?日本とフランスの違い
フランスのクローゼットが小さいのは確かですし、日本人のように1.2回しか着ない洋服がある…というような無駄な買い物をしていません。
私が仕事で携わって思うことは、フランス人の方はとにかく街を見て、すごく慎重に洋服を選んでいることです。
フランス人は自分に合う定番スタイルを持っていて、好みのテイストがハッキリとしているので、クローゼットの中身を把握して本当に必要なものだけを購入する習慣がついているのです。
世界のファッション・リーダー的雑誌、「ELLE」の本家本元フランス・エディション版を見てみると、日本の「ELLE」との違いがとても良くわかります。
日本のファッションに「核」がないのです。「生き方」とも言うのでしょうか…「自己のこだわり」…かな。
フランス人は自分が芸術の街・ファッションの発信地ということも自覚していて、「自分」というものを持っています。
もうひとつ、日本人がフランスの洋服の着数を見習うことは、不健康であることもお伝えしたいと思います。
まずは、日本と気候が違うということです。
パリと東京の気温差を見てください。 <グラフ出典:A06 地球の歩き方 フランス 2017~2018>
パリ 最低気温が0℃ 最高気温25℃
東京 最低気温が5℃ 最高気温32℃
パリの最高気温は25℃で、日本でいう「春服」で代用できる範囲であることがわかり、冬服の防寒着が大活躍の街。
日本には四季があり、北から南まで様々な気候の中で暮らしているので、猫も杓子も「パリジェンヌのように…」というファッションの見習い方には無理があります。
そして、降水量の違いから湿度も違い、気候や湿度によって着替えがいらないフランスと日本を物事をいっしょに考えるのは、とても不健康でもあるのです。
国の文化や業界などで通らない理論を、あたかも正しいと伝えてしまう情報に疑問を感じてしまいます。
「フランス人は10着しか服を持たない」フランスの伝えるべき「丁寧な暮らし」
日本でブームである捨てる習慣「断捨離」
基本「無駄なモノを一切持たない」のが、フランス人ではありますが、「フランス人は10着しか服を持たない」とタイトルのような生活をしているわけではありませんし、捨てることをしません。
そのような流れの一部が日本では「断捨離」という「捨てる」という方向に向かっていることがとても残念に思います。
「断捨離」は最終的には「精神論」に繋がるものですが、ただ単にモノも捨てることではありません。
そして、フランスや北欧のミニマリストはモノを捨てません。
最後の最後まで「モノを生かす」ということにこだわります。
ご存知だと思いますが、フランス人はケチで質素であることが世界中で有名です。
フランス人の意識の基本はカトリックのために、成金を嫌う国民性があって、お金の価値について「モノを買い集めるもの」ではなく、「必要なものだけを補充するためのもの」と考えています。
お金は生活のツールとして捉えているので、お金が無いから知恵を使おうとすることから、自然にセンスが磨かれていったのです。
かっこいいファッションセンスは、洋服をたくさん持っているわけではなく、服の着こなしで1つの服を長く使える知恵(センス)があり、フランス人の気質から生まれています。
フランスをはじめ、欧州各国が古い町並みや歴史的景観を保存し、モノや自然を大切にする姿勢や哲学には学ぶべき点が多くあります。
日本は使い捨て文化とも言われていますが、「もったいない」という言語が世界に広がっているように、日本にも素敵な文化が「根」にはあるのです。
フランスでのライフスタイルは「お金を使わず知恵を使う」ということから、「修理文化」なので簡単にモノを捨てないのです。
洋服は形を変えて再利用し、最後はぞうきんかもしれません。
キッチンで大活躍するサランラップでさえ、品質が日本より劣っている品質でも、数回の使い回しをしています。
フランス人はDIYが好きと言われていますが、「モノを大切にする行為」でお気に入りの家具の修理、そして、最後まで使用するための「自分の好みの色や形にするためのこだわり」なのです。
雑巾まで商品になっている日本。
自分の身の回りの不要なものから雑巾などをつくる「もったいない精神」の日本の習慣は消えてしまったのでしょうか。
ゴミ大国-日本
ドイツ・フランスそして北欧などで、国の基本的方針として既にシステム化された古着工場があって、中古衣料を東欧など衣類の不足している国へ輸出しています。
日本では現在、年間200数万トンの古着の再利用率は10%しかありません。
フランスではリフォームの苦手な方は「エマウス(emmaus)」に寄付という形で利用するのです。
emmaus
貧困、社会的締め出し、失業、ホームレスなど社会から疎外された人々を救援するための運動で、廃品回収と修復、販売は雇用を作るための手段とされている。
エマウスのアジア支部が日本にも数か所あったのですが、現在の活動は無くなっているので、日本では定着しなかったのですね。
とても残念です。
日本人は世界に比べて「寄付をする」ということが日常で身近ではありません。
実際、自分の生活が先に立つのは当然です。
しかし、現金の寄付に抵抗がある方が、自分の不要なモノの処分方法に手間をかけることで、大きな意義をもつと知ってもらえたら、どんなに素敵なことでしょう。
断捨離でモノを捨てる方へお願い
断捨離がブームになって、モノが…それもまだ使用できる良質のモノが捨てられている状況なので、捨てるのであれば、その場を置き換えるだけで、多くの人が助かります。
今、あなたが捨てようとしているものが、どこかの誰かが求めているもの、洋服のない人達に届くのかもしれません。
日本国内でも不便な生活を強いられている子供がいるのです。
あなたの普段着が、ある国ではとっておきの外出着になるのかもしれません。
着ない子供の洋服は、ある国では命を守ってくれる「ワクチン」になるのです。
あなたのお子さんの不要なおもちゃが、どこかの国の多くの子供の笑顔を生み出すのかもしれません。
できることなら…
あなたの大切にしてきたものを、最後まで大切にしてくれる人へ届けていきませんか?
日本のミニマリストと言われている方達が
断捨離で捨てるものを支援物資の協力にシフトチェンジしたら
どれだけの人が幸せになるのでしょう。
最近、捨てるモノの選別をするようになって、「もったいないな…」と思い、捨てる前に支援物資先を調べるようにしました。
私が利用した先を残しておきます。
■日用品・文具・台所食器・衣類・着物・文具・インテリアなど
認定NPO法人WE21ジャパン
支援先の国々の文化や経済を考慮して、物品を直接送ることは行っていませんが、販売した収益から民際協力を行っています。
■子供服
古着deワクチン
■一般衣類
特定非営利活動法人 日本救援衣料センター
日本救援衣料センターが、責任を持ってお気持ちを現地までお届けてくれます。
■ユニクロ・ジーユー衣類
ユニクロ・ジーユーリサイクル
ユニクロ・ジーユーで販売した全商品が対象・いつでもBOXに入れられます。
リユースとして世界中の服を必要としている全ての人へお届けする活動です。
■書籍・コミック・CD・DVD等
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会
読まなくなった本や使わなくなったアクセサリーなどの査定額が寄付されます。
全国各地に送料無料でお引き取りに来てくれます。
■世界ではこんな動きも!
<地球ニュース>ドイツで広まっている「GIVEBOX」
その洋服、捨てないで! 世界で広まる古着回収ボックス|地球ニュース|Think the Earth
<フランス発>アフリカ諸国へ出荷
フランス情勢を考えると、気持ちの中では様々な思いもあり、政治的なことにもなるので、今回は素敵な生活の根にあるものは「自分を知る生き方」であることだけにしました。
「フランス人は10着しか服を持たない」という書籍で、「丁寧に暮らす」という国民性がもっと伝えられたらいいのに…という気持ちでいっぱいです。